あなたのまちの「地方創生」、地域政治はどう関わる?事業主が知っておきたいこと
はじめに
近年、「地方創生」という言葉を耳にする機会が増えているのではないでしょうか。これは国が進める取り組みですが、実際に私たちの暮らしや事業にどう影響するのか、そしてそれが地域の政治とどうつながっているのか、具体的なイメージが湧きにくいかもしれません。
地域で事業を営む方にとって、地方創生の動向や、それを推進する地域政治の動きは、事業機会の創出や地域への貢献といった点で重要な意味を持ち得ます。この記事では、地方創生とは何か、そして地域政治がどのように関わっているのか、さらに事業主として知っておきたいことや関わり方について解説します。
地方創生とは何か?その基本的な考え方
「地方創生」とは、人口減少や高齢化が進む中で、各地域がそれぞれの特徴を生かした自律的かつ持続可能な社会を築き、地方への新しい人の流れをつくり出すことを目指す取り組みです。
具体的には、主に以下の4つの目標を掲げています。
- 雇用の創出: 地域で魅力的な仕事を生み出し、安心して働き続けられる環境を整備します。
- 新しい人の流れ: 東京一極集中を是正し、地方への移住や交流を促進します。
- 若い世代の結婚・出産・子育ての希望実現: 若年層が将来への希望を持てるよう、子育てしやすい環境や働く環境を整えます。
- 時代に合った地域づくり: 地域の資源を活用し、地域間連携やIT技術の活用などを通じて、魅力ある地域社会を形成します。
地方創生は、国が全体の方向性を示し、財政的な支援を行う一方で、具体的な計画の策定や事業の実施は各地方自治体に委ねられています。つまり、あなたの住むまちの地方創生は、あなたのまちの地域政治が中心となって推進しているということです。
地域政治は地方創生にどう関わるのか?
地方創生は、まさに地域政治の主要なテーマの一つと言えます。あなたのまちの首長(市長や町長など)や議会は、地方創生を推進するために様々な役割を担っています。
首長と行政の役割
首長は、まち全体のリーダーとして地方創生の推進の先頭に立ちます。
- 「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の策定: 国の長期ビジョンを踏まえ、あなたのまちの現状や課題、将来像、そして具体的な目標と施策を盛り込んだ5カ年の計画を策定します。これは、あなたのまちが今後どのような方向を目指すのかを示す羅針盤のようなものです。
- 具体的な事業の実施: 総合戦略に基づき、産業振興、雇用対策、子育て支援、移住促進などの様々な事業を、担当部署(行政の各課)を通じて実施します。
- 国や他自治体との連携: 地方創生に関連する国の交付金や補助金を活用したり、近隣の自治体と協力して広域的な取り組みを進めたりします。
議会の役割
議会は、首長が提案する地方創生に関連する計画や事業について、住民の代表として審議・承認を行います。
- 総合戦略や予算の審議: 策定された総合戦略や、それを実行するための予算案が適切であるか、地域の課題解決に本当に資するのかなどを議論し、承認または修正を求めます。
- 首長へのチェック: 地方創生関連の事業が計画通りに進んでいるか、効果が出ているかなどを監視し、必要に応じて改善を求めます。
- 条例制定: 地方創生を後押しするための独自の条例(例: 空き家対策条例、特定の産業振興条例など)を制定することもあります。
- 住民の声の反映: 議会活動や議員個々の活動を通じて、地方創生に関する住民や事業者の意見を行政に届けます。
このように、地域政治は地方創生の計画から実行、チェックまで、その根幹に関わっています。
事業主として知っておきたい地方創生への影響と関わり方
地方創生は、地域の経済や社会構造に変化をもたらす可能性があり、それは地域で事業を営む皆様にとっても無関係ではありません。
事業主への影響
- 事業機会の創出: 地方創生関連の事業には、地域内での様々な仕事が生まれる可能性があります。例として、新しい観光コンテンツの開発、地域産品を活用した商品開発、高齢者向けサービスの拡充、再生可能エネルギーの導入などが挙げられます。また、行政や他の事業者との連携による新たなビジネスチャンスも考えられます。
- 補助金・助成金の活用: 地方創生に関連して、事業拡大や新規事業立ち上げに活用できる国の補助金や、自治体独自の助成金が設けられることがあります。
- 地域経済の変化: 地方創生の取り組みによって、地域の人口構成や産業構造が変わり、消費行動やニーズにも影響が出ることが予想されます。
事業主としての関わり方
地方創生は、単に行政が進めるものとして傍観するだけでなく、地域の一員である事業主として積極的に関わることで、地域貢献と事業発展の両立を目指せる可能性があります。
- 情報収集:
- あなたのまちの「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を確認してみましょう。自治体のウェブサイトなどで公開されています。あなたのまちが何に力を入れているかを知ることができます。
- 議会の議事録や広報誌、自治体の広報誌などを通じて、地方創生に関する議論や事業の進捗を把握しましょう。
- 意見表明・提案:
- 地方創生について、事業活動を通じて感じている地域の課題や、地域経済を活性化させるためのアイデアを、地域政治家(議員や首長)や行政に伝えることができます。
- 地域が主催する懇談会やワークショップなどに参加し、直接意見を述べる機会を活用することも考えられます。
- 事業連携:
- 自治体や他の事業者、NPOなどと連携し、地方創生の目標達成に貢献する事業を共同で実施することも選択肢の一つです。近年、「公民連携」と呼ばれる取り組みも増えています。
- 地域のイベントやプロジェクトに協力・参加することも、地域とのつながりを深め、事業を知ってもらう良い機会になります。
- 補助金・助成金の活用検討: 自社の事業が地方創生の目指す方向性と合致する場合、関連する補助金や助成金がないか情報収集し、活用を検討してみましょう。
あなたの事業が持つ技術やノウハウが、地方創生の課題解決に役立つ可能性は十分にあります。地域政治の動向に関心を持ち、積極的に情報を得ることから始めてみてはいかがでしょうか。
まとめ
地方創生は、あなたのまちの将来に関わる重要な取り組みであり、地域政治がその推進役を担っています。首長が総合戦略を策定し、議会がそれをチェック・承認することで、具体的な事業が動き出します。
地域で事業を営む方にとって、地方創生は新たな事業機会や連携の可能性をもたらすものです。あなたのまちの総合戦略や関連する議会の議論に関心を持ち、必要に応じて意見を伝えたり、連携の機会を探ったりすることで、地域への貢献とともに事業の発展にもつなげられるかもしれません。まずは、お住まいの自治体の地方創生に関する情報を調べてみることから始めてみてはいかがでしょうか。